帝王切開の麻酔 Q&A
Q2. 帝王切開の麻酔法にはどのような方法があるのですか?
麻酔の方法には大きく分けて2種類あります。 「局所麻酔」と「全身麻酔」です。局所麻酔では、背中にある神経の束の近くに薬を投与し(Q4、Q5を参照)、胸から足先までの痛みの感覚がなくなります。
しかし通常薬は脳には作用しないため、お母さんの意識ははっきりしていて、赤ちゃんが産まれてきたときの泣き声も聞こえます。 一方、全身麻酔では点滴から麻酔の薬を注入したり、肺から吸い込む麻酔の薬を用いたりします。手術の間お母さんはずっと眠っています。
2つの方法の比較を下の表にまとめます。
局所麻酔 | 全身麻酔 | |
---|---|---|
お母さんへの影響 | 意識がはっきりしている 呼吸への影響が少ない |
意識はない(眠っている) 呼吸の補助が必要 |
生まれたばかりの 赤ちゃんへの影響 |
ほとんどない | 眠くなったり、 呼吸が弱くなることがある |
十分な麻酔の効果が 現れるまでの時間 |
比較的短い | とても短い |
局所麻酔ではお母さんの血液中に吸収される麻酔薬の量はごくわずかですが、それに比べて全身麻酔では血液中の薬の量が多くなり、その薬は胎盤を通って赤ちゃんの脳にも届きます。 産まれたばかりの赤ちゃんが少し眠そうだったり、呼吸が弱くなったりすることがあるのはこのためです。 しかし、眠くなったり呼吸が弱くなったりするのは一時的なことです。薬が体から消えてなくなれば元気になります。 ただし、お母さんに麻酔による不具合がおこる率は、全身麻酔のほうが局所麻酔より高いといわれています(※1)。
したがって、お母さんと赤ちゃんへの影響が少ない局所麻酔が、帝王切開においては第一選択の方法です。 しかしやむを得ず全身麻酔を行う場合もあります。 緊急帝王切開の中でも特に急いで帝王切開を行わなければならないときや、お母さんの血液が固まりにくいときなどが、例として挙げられます。 詳しくはQ7「局所麻酔ができないことはありますか?」をご覧ください。
- ※1. Hawkins JL et al. Obstet Gynecol.117:69-74,2011