無痛分娩 Q&A
Q19. 海外ではどのくらいの女性が硬膜外無痛分娩を受けているのでしょうか?
日本の硬膜外無痛分娩率は徐々に増加しています。日本産婦人科医会が2025年に公表した資料では、日本全体の無痛分娩の実施率は、2018年の5.2%から2025年には16.2%まで上昇しました(※1)。また、日本産婦人科医会の調査では、日本で行われている無痛分娩の多くが、硬膜外麻酔を中心とした方法であることも示されています(※2)。このことから、日本でも硬膜外無痛分娩は以前より選ばれることが増えてきていると考えられます。
海外では、日本より無痛分娩が広く行われている国が少なくありません。アメリカでは、2016年から2022年の大規模なデータ解析で、分娩時に背中から行う麻酔・鎮痛法(硬膜外麻酔などを含む方法)が使われた割合は74%でした(※3)。フランスでは、2021年の全国調査で、経腟分娩を予定していた女性の82.7%が硬膜外鎮痛を受けていました(※4)。カナダでも、公的な統計で硬膜外鎮痛の実施率は57.8%と報告されており(※5)、北米では分娩時の痛みを和らげる医療が広く普及していることが分かります。
また、オーストラリアでは2023年に、分娩を経験した女性の42%が硬膜外麻酔またはそれに近い方法による鎮痛を受けたと報告されています(※6)。フィンランドでは、全国の出生データをもとにした報告で、2019年の硬膜外鎮痛の実施率は全体で53%、初産婦では76%でした(※7)。オランダでも、全国データに基づく報告では、2018年に全分娩の21.5%で硬膜外鎮痛が行われていました(※8)。このように、先進国では日本より無痛分娩が広く行われている国が多くみられます。
一方で、海外の数字を比べるときには注意も必要です。たとえば英国では、NHS England という全国規模の統計で、分娩の前または分娩中に何らかの麻酔や鎮痛が行われた割合は2023–24年に56%と報告されています(※9)。ただし、この数字は硬膜外鎮痛だけを示したものではなく、ほかの方法も含んだものです。ドイツでも、硬膜外鎮痛は20~30%程度とされることがありますが(※10)、これは主にこれまでに発表された複数の研究や報告をまとめて整理した論文の中で示されている数字で、やや情報が古く最新の全国調査として直接示されたものではありません。そのため、英国やドイツの数字は「おおよその参考値」として見るのが適切です。
このように、国ごとの無痛分娩率を比べるときには、単純に数字だけを並べるのではなく、「硬膜外麻酔だけを数えているのか」「硬膜外以外の方法も含んでいるのか」「全分娩を対象にしているのか、経腟分娩だけを対象にしているのか」といった違いも考える必要があります。そのため、各国の数字は厳密に同じ条件で比べられるものではありません。また、同じ国内でも地域によって医療資源の格差が大きい国もあるため、これらの数値が本当に各国の状況を表しているとは限りません。したがって、無痛分娩がどのくらい普及しているかを大まかに知るための目安として理解するのがよいでしょう。
- ※1. 公益社団法人日本産婦人科医会 医療安全部会,硬膜外無痛分娩の現状 〜日本産婦人科医会施設情報からの解析〜. 2025.11.
- ※2. 公益社団法人日本産婦人科医会 医療安全部会,無痛分娩の実態調査についての報告. 2024.8.
- ※3. Martinez, E., et al. Pregnancy, 1: e70127.
- ※4. Le Ray C, et al. J Gynecol Obstet Hum Reprod. 51(10):102509, 2022.
- ※5. Public Health Agency of Canada. Labour and birth in Canada 2018.
- ※6. Australian Institute of Health and Welfare. Australia’s mothers and babies 2023: Analgesia. 2025.
- ※7. Räisänen S, et al. Int J Obstet Anesth. 52:103616, 2022.
- ※8. Damhuis SE, et al. Ultrasound Obstet Gynecol. 61(6):816-825, 2023.
- ※9. NHS England. NHS Maternity Statistics, England, 2023–24. 2024.
- ※10. Stamer UM, et al. Eur J Anaesthesiol. 16(5):308-314, 1999.