無痛分娩 Q&A

Q17. 硬膜外鎮痛は授乳に影響を与えますか?

近年では分娩時の硬膜外鎮痛は、母乳育児の確立に影響しないという報告が多くみられます(※1,2)。また現在は低濃度の局所麻酔薬に少量のオピオイド(麻薬)を加えて硬膜外投与する方法が主流となっていますが、局所麻酔薬のみを投与した場合とオピオイドを加えた場合とで、生後6週間及び3か月での母乳育児の確立に差はなかったと報告されています(※3)。一方で分娩時に硬膜外鎮痛を行った群では、自然分娩群と比較して出産数日後及び1か月後で自然分娩群と比較してオキシトシン分泌量、乳汁分泌量が少なく、生後1か月での授乳率が低いとの報告もあります。硬膜外鎮痛で使用するオピオイドの量が多かった場合にこの傾向が強いと報告されていますが、理由については分かっていません(※4)。

オキシトシン分泌は赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激により母乳を外へ押し出す反射(射乳反射)やボンディング(お母さんと赤ちゃんの絆)形成に影響すると言われています。赤ちゃんがお乳を吸うことでオキシトシンや母乳を作るホルモン(プロラクチン)の分泌が促されます。またできるだけ頻回に吸わせることで母乳が作られる仕組みになっています。産後のカンガルーケアも母乳分泌に良い影響を与えることが分かっています。硬膜外鎮痛を選択したお母さんでは、カンガルーケアを行う割合が少ない、授乳頻度が低いとの報告もあります。(※4)母乳育児の確立には、出産後できるだけ早く母乳を赤ちゃんに直接与えることが推奨されています(※5)。 生後24-48時間以内にお母さんから直接母乳を吸っていた赤ちゃんで、生後6ヶ月の母乳育児の割合が多かったことが報告されており、 この研究では、硬膜外鎮痛は母乳育児に影響を与えませんでした(※6)。

これらの論文において、母乳育児を確立・継続していくためには、出産後からの継続的な専門家による母乳育児へのサポートが必要であり、硬膜外鎮痛そのものが母乳育児を妨げるものではないと結論づけています。また母乳育児の継続は、母乳育児に対する考え方や育児支援の有無、お母さんの社会復帰など多くの要因が絡む問題であるとも言えます。

  • ※1. David H. Chesnut. Anesthesiology 2017;127:593-595
  • ※2. French CA, Cong X, Chung KS. J Hum Lact 2016;32:507-520
  • ※3. Lee AI, McCarthy RJ, Toledo P, Jones MJ, White N, Wong CA. Anesthesiology 2017;127:614-624
  • ※4. Kaori Takahata, Shigeko Horiuchi, Ai Miyauchi, Yuriko Tadokoro, Takuya Shuo. Sci.Rep 2023;13:
  • ※5. http://www.who.int/topics/breastfeeding/en/
  • ※6. Forster et al. BMJ Open. 5:e007512,2015