無痛分娩 Q&A

Q13. 硬膜外無痛分娩のメリットはなんですか?

何といっても第一のメリットはお産の痛みが軽くなることです。 硬膜外無痛分娩は鎮痛効果が強く、強い痛みをまったく感じずに分娩に至るお母さんがたくさんいます。 疲労が少なかった、産後の回復が早かったという感想もよく聞かれます。

また一般にお産の痛みに耐えているときは、お母さんから赤ちゃんに届く酸素が減るといわれていており、以下のような理由が考えられています。まず、陣痛のような強い痛みがあると、お母さんの体の中でカテコラミンという血管を細くする物質が増えてしまいます(※1)。この物質により、お母さんと赤ちゃんとをつないでいる血管も細くなって、お母さんから赤ちゃんへ酸素を届けている血流も少なくなってしまいます。また、お母さんは陣痛がきているときは痛みのあまり呼吸が速く浅くなりますが、逆に陣痛と陣痛の合間には呼吸を休みがちになってしまうことがあり、そのせいでお母さんの体の酸素の量が減ってしまうといわれています(※2)。これもお母さんから赤ちゃんへ届ける酸素を減らしてしまう原因と考えられています。 したがって硬膜外無痛分娩によって痛みが軽くなれば、血管を細くする物質も減ってお母さんと赤ちゃんを結ぶ血管も細くなりづらく(※3)、呼吸も落ち着いてできるので赤ちゃんに酸素がたくさん供給されると考えられています。

そうはいっても正常な妊娠や分娩経過では、痛みによって赤ちゃんへの酸素供給が多少減ることはそれほど問題にはなりません。 しかし妊娠高血圧症候群(かつて妊娠中毒症といわれた病気)のように、もともとお母さんと赤ちゃんを結ぶ血管が細くなっていて血流が減っている状態の妊婦さんでは、痛みによって悪い影響があるかもしれません。 実際に、妊娠高血圧症候群の妊婦さんに硬膜外鎮痛を行ったところ、赤ちゃんへの血流が増えたという報告もあります(※4)。

また、一般的に陣痛がきているお母さんでは、身体に必要な酸素の量が増えてしまうのですが、硬膜外無痛分娩によってその量を増えにくくすることができると言われています(※5)。 この特長は、心臓や肺にご病気のあるお母さんにメリットをもたらすことがあります。例えば心臓や肺にご病気のある妊婦さんでは、陣痛がくると身体に必要な酸素の量が増えてしまうことで心臓や肺に負担がかかってしまいますが、硬膜外無痛分娩によってその負担を軽くすることができます。したがって、そうしたご病気をお持ちの方には医学的適応として硬膜外無痛分娩をすすめる場合もあります。

  • ※1. Anim-Somuah M et al. Cochrane Database Syst Rev. 5: CD000331, 2018
  • ※2. Levinson G et al. Anesthesiology. 40: 340-7, 1974
  • ※3. Shnider SM et al. Am J Obstet Gynecol. 147: 13-15,1983
  • ※4. Jouppila P et al. Obstet Gynecol. 58:158-161,1982
  • ※5. Hägerdal M et al. Anesthesiology. 59:425-427,1983