帝王切開の麻酔 Q&A

Q13. 全身麻酔の副作用にはどんなものがありますか?

帝王切開の麻酔には、全身麻酔と局所麻酔(脊髄くも膜下麻酔・硬膜外麻酔など)があります(Q2「帝王切開の麻酔法にはどのような方法があるのですか?」を参照)。
現在は、多くの帝王切開で脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔が第1選択です。全身麻酔は、赤ちゃんを急いで取り出す必要があるとき、出血が多いとき、背中からの麻酔が難しいときなどに選ばれます(※1)。
全身麻酔は必要なときにはとても大切な方法ですが、脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔と比べると、赤ちゃんに麻酔の影響が出やすいこと、吐いたものが肺に入る危険、のどの痛み、呼吸の管が入れにくいことなどに、より注意が必要とされています(※2)。

① 赤ちゃんが少し眠そうになることがあります

お母さんに投与された全身麻酔の薬は、胎盤を通して赤ちゃんの脳にも達します。 麻酔担当医は、赤ちゃんへの影響を最小限にするために薬の種類や量などを工夫しますが、産まれたばかりの赤ちゃんが、少し眠そうであったり、呼吸が弱くなることがあります。その場合には呼吸の補助を必要とします。しかし薬の影響がなくなれば、赤ちゃんはすぐに元気になります。脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔では、このような赤ちゃんへの薬の影響は一般に少なくなります(※2)。

② 吐き気や嘔吐、のどの痛みが出ることがあります

全身麻酔のあとには、吐き気や嘔吐、のどの痛み、声のかすれが出ることがあります。これは麻酔薬の影響や、呼吸のための管をのどに入れることが関係しています。多くは一時的で、数時間から1~2日ほどで軽くなります(※3,4)。

③ まれに、吐いたものが肺に入ることがあります

お母さんの意識があるときには、仮に嘔吐したとしても口から吐き出すことができますが、意識のないときには嘔吐したものが肺に入り込み、肺炎を起こすことがあります。 妊婦さんは嘔吐を防ぐ機能が弱くなっているため、胃の中の内容が戻りやすくなっています。したがって、まれではありますが、妊婦さんでは妊娠していない患者さんと比べて、全身麻酔をしたときの嘔吐に伴う肺炎が多いといわれています。そこで手術前のお母さんには飲食を控えてもらうという原則を守ってもらいます。麻酔担当医によって胃の内容物を少なくする働きのある薬を使うこともよくあります。脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔と比べ、全身麻酔ではこの危険性が増加します(※1,2)。

④ まれに、呼吸の管が入れにくいことがあります

全身麻酔薬により呼吸が弱くなったり止ってしまったりするため、全身麻酔中はのどに管をいれて、人工呼吸を行うことが多いです。しかし妊娠中は、のどや気道がむくみやすいため、呼吸の管を入れるのが難しくなることがあります。このため、産科の全身麻酔では特に慎重な準備が行われます(※2)。

⑤ 出血は、全身麻酔のほうがやや多い傾向があります

帝王切開を対象にした研究をまとめた報告では、全身麻酔のほうが脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔より出血量がやや多い傾向が示されています(※4)。ただし、差が大きくないこともあり、輸血が必ず増えるとまでははっきりしていません。また、もともと出血が多いと予想される妊婦さんに全身麻酔が選ばれることもあるため、単純に数字だけで比べることはできません(※5)。

⑥ ごくまれに、麻酔中のことを覚えていることがあります

全身麻酔では、ふつうは眠っていて手術中のことを覚えていません。しかし、ごくまれに、音や会話、体を動かせない感じなどをあとで覚えていることがあります。これを術中覚醒といいます。帝王切開の全身麻酔では、赤ちゃんへの薬の影響も考えながら麻酔の深さを調整するため、特に慎重な管理が必要です。こうしたことが起こらないように、麻酔科医は薬の使い方や麻酔の管理を工夫しています(※6)。

このように、全身麻酔には区域麻酔より注意が必要な点がありますが、必要な場面では全身麻酔が最も安全で適した方法になることもあります。麻酔科医は、お母さんと赤ちゃんの状態をみながら、その時に最もよい方法を選びます(※1,7)。

  • ※1. American Society of Anesthesiologists. Practice Guidelines for Obstetric Anesthesia. 2016.
  • ※2. Delgado C, et al. BJA Education. 20(6):184-188, 2020
  • ※3. Royal College of Anaesthetists. Risks associated with general anaesthesia. 2024.
  • ※4. Royal College of Anaesthetists. Sore throat. 2024.
  • ※5. Heesen M, et al. Acta Anaesthesiol Scand. 57(9):1092-1102, 2013
  • ※6. Odor PM, et al. Anaesthesia. 76(6):759-776,2021
  • ※7. Guglielminotti J, et al. Anesthesiology. 130(6):912-922,2019